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2026.08.04

BIM・建築設計でAIを使って大丈夫?情報管理・コスト・セキュリティの注意点

建築業界でも、AIを業務に活用する動きが広がっています。設計資料の作成や議事録の要約、BIMデータの整理、コード作成補助など、AIをうまく取り入れることで、日々の業務効率化につながる場面も増えています。

「図面やBIMデータをAIに入力してもよいのか」「社員が個人アカウントでAIを使っていて問題ないのか」と不安を感じている企業もあるのではないでしょうか。

一方で、BIMや建築設計の現場では、図面、施主情報、仕様書、積算情報、未公開案件の資料など、機密性の高い情報を扱うことが少なくありません。AIツールの使い方を誤ると、情報漏えいや誤った設計判断、想定外のAPIコスト、不正コードの利用といったリスクにつながる可能性があります。

AIは便利なツールですが、建築設計の判断やBIMデータの取り扱いをすべて任せられるものではありません。この記事では、BIM・建築設計でAIを使う前に知っておきたい注意点を、情報管理・コスト・セキュリティリスクの観点から整理します。

BIM・建築設計でもAI活用は進みつつある

BIM・建築設計の分野でも、AIは少しずつ実務に近いテーマになっています。たとえば、設計資料のたたき台作成、議事録や打ち合わせメモの要約、仕様書の整理、BIM関連情報の調査、図面説明文の作成補助など、設計業務の周辺作業ではAIを活用しやすい場面があります。

また、BIMは建物を3Dで表現するだけでなく、部材、仕様、数量、コスト、工程などの情報を扱う仕組みです。そのため、BIMデータに含まれる情報の整理や確認、検索、要約といった作業では、AIと組み合わせやすい面があります。

たとえば、部材情報を整理したり、設計条件を文章化したり、打ち合わせ内容とBIM上の変更点を確認したりする場面では、AIの活用が業務効率化につながる可能性があります。

一方で、BIMデータや図面には機密性の高い情報が含まれる場合もあります。AIを活用する際は、単に便利なツールとして使うのではなく、入力する情報や出力結果の扱い方に注意することが大切です。

BIMデータや図面をAIに入力する前に確認すべきこと

AIを活用する際に特に注意したいのが、BIMデータや図面、設計資料などをそのままAIツールに入力してよいかという点です。BIM・建築設計の業務では、一般的な文章データだけでなく、案件固有の情報や機密性の高い資料を扱うことが多いため、入力する情報の内容を事前に確認する必要があります。

BIMデータには機密性の高い情報が含まれる場合がある

BIMデータや図面には、建物の形状だけでなく、用途、仕様、部材情報、数量、設備、構造、コスト、工程など、さまざまな情報が含まれます。

案件によっては、次のような情報が含まれている場合もあります。

  • 施主名や関係者名
  • 敷地・所在地に関する情報
  • 未公開プロジェクトの計画内容
  • 建物用途や特殊な仕様
  • 設備・構造・セキュリティに関わる情報
  • コスト、数量、工程に関する情報

これらの情報をAIに入力する場合は、まず「社外のサービスに送信してよい情報か」を確認することが重要です。

施主情報・住所・未公開案件は特に注意する

特に注意したいのは、施主名、企業名、担当者名、住所、案件名、契約前の提案資料、未公開プロジェクトの図面などです。

クライアントから預かった資料には、守秘義務が関係する場合もあります。そのため、社内判断だけでAIに入力するのではなく、契約上問題がないか、社外サービスへの入力が認められるかを確認する必要があります。

また、建築写真、パース、図面、クライアントから提供された参考資料などをAIに入力する場合は、著作権や利用条件にも注意が必要です。社内検討用として使うのか、提案資料や広告など社外向けに使うのかによっても、確認すべき範囲は変わります。

匿名化しても安全とは限らない

名前や住所を削除すれば安全とは限りません。建物用途、敷地条件、図面内容、特殊な仕様、周辺情報などから、案件や関係者が推測できる場合もあります。

AIに入力する情報は、単に個人名を消すだけでなく、情報全体として特定につながらないかを確認することが大切です。

BIMデータや図面をAIに扱わせる場合は、「便利だから入力する」のではなく、入力してよい情報と避けるべき情報を明確に分けておく必要があります。

個人アカウントでのAI利用は会社側で管理しにくい

AIツールは手軽に利用できるため、社員が個人アカウントで業務に使っているケースもあります。簡単な文章作成や調査補助であれば便利に感じられますが、BIM・建築設計の業務で使う場合は、会社として情報管理ができているかを確認する必要があります。

社員がそれぞれ個人アカウントでAIツールを使うと、会社側では、どのツールにどの情報を入力しているのかを把握しにくくなります。たとえば、設計条件、図面の内容、議事録、提案資料、クライアントから受け取った資料などを個人判断でAIに入力してしまうと、入力データの扱い方や保存期間、学習利用の有無を確認できないまま、業務情報が外部サービスに送信される可能性があります。

また、個人アカウントに業務データの履歴が残ることで、退職時や担当変更時の管理が難しくなる場合もあります。

AIツールを業務で使う際は、「有料プランだから安全」と単純に判断しないことも重要です。サービスによって、入力データの取り扱い、学習利用の有無、管理者機能、ログ管理、契約条件は異なります。

特にBIM・建築設計では、機密性の高い情報を扱うため、料金プランだけでなく、業務利用に適した契約形態か、会社として管理できる機能があるかを確認する必要があります。会社としてAIを活用する場合は、個人ごとの判断に任せるのではなく、利用者管理、権限設定、データ利用設定、請求管理、利用ルールの周知などを整えたうえで導入することが大切です。

AIの出力を設計判断にそのまま使わない

AIは文章の整理やアイデア出し、情報の要約などに役立つ一方で、出力された内容が必ず正しいとは限りません。BIM・建築設計の業務では、AIの回答をそのまま設計判断に使うのではなく、必ず専門者が確認する前提で活用することが重要です。

AIは自然な文章で誤った情報を出すことがある

AIの出力は、文章として自然で分かりやすく見える場合があります。しかし、内容が正確であるとは限らず、条件の読み違いや、古い情報、根拠が不明確な説明が含まれる可能性があります。

特に建築設計では、法規、構造、設備、施工方法、材料、コストなど、正確な判断が求められる場面が多くあります。AIの回答がもっともらしく見えても、根拠を確認せずに採用すると、設計品質や安全性に影響する可能性があります。

法規・構造・設備・施工性は専門者の確認が必要

建築基準法などの法規確認、構造に関わる判断、設備計画、避難計画、施工性の確認、積算や数量算出などは、AI任せにすべきではありません。

たとえば、AIに法規の概要を調べさせることは参考になりますが、実際の案件に適用できるかどうかは、建物用途、規模、地域、条例、設計条件によって変わります。AIの回答だけで判断せず、必ず設計者や有資格者、担当者が確認する必要があります。

AIは判断者ではなく補助者として使う

AIは、設計者の判断を置き換えるものではなく、検討や整理を支援する補助ツールとして使うのが現実的です。資料のたたき台を作る、確認すべき論点を洗い出す、議事録を整理する、説明文を分かりやすくするなどの使い方であれば、業務効率化に役立つ可能性があります。

一方で、最終的な設計判断や社外に提出する資料の内容については、人が責任を持って確認する必要があります。AIの出力は「そのまま使うもの」ではなく、「確認・修正する前提の下書き」として扱うことが大切です。

API連携やコード利用で注意したいコスト・セキュリティリスク

AIを業務に取り入れる方法には、ChatGPTのような画面上で使う方法だけでなく、APIを使って社内システムやBIM関連ツールと連携する方法もあります。また、BIM業務では、Revit API、Dynamo、Python、Grasshopperなどを使い、作業を自動化するケースもあります。

これらは業務効率化につながる一方で、コストやセキュリティ面の管理が不十分なまま使うと、想定外の費用発生や情報漏えいにつながる可能性があります。

AI APIは利用量に応じて費用が変わる

API連携を行うことで、議事録の要約、仕様書の整理、BIM関連情報の検索補助、図面説明文の生成などを自動化できる可能性があります。一方で、AI APIは利用量に応じて費用が変わる(従量課金制)の場合があるため、事前にコストの考え方を確認しておくことが重要です。

BIM関連データは入力量が多くなりやすい

BIM・建築設計の業務では、AIに入力する情報量が多くなりやすい傾向があります。議事録、仕様書、設計条件、図面説明文、BIM属性情報、質疑回答、技術資料などは、文章量が多くなりやすいデータです。

これらをまとめてAIに処理させたり、複数案件で繰り返し利用したりすると、月ごとの利用量が読みにくくなる場合があります。APIを活用する際は、処理するデータ量、利用頻度、利用者数を踏まえてコストを管理する必要があります。

AI生成コードや外部コードをそのまま使わない

AIを使えば、BIM業務で使うコードやスクリプトのたたき台を作成しやすくなります。しかし、生成されたコードやGitHubなどから取得した外部コードを、そのまま業務環境で実行するのは避けるべきです。

外部コードには、不具合や脆弱性が含まれる可能性があります。場合によっては、意図しない外部通信、ファイル操作、認証情報の取り扱い、古いライブラリの利用などが含まれていることもあります。特にBIMデータや社内ファイルにアクセスするコードを扱う場合、内容を確認しないまま実行すると、データの破損や情報漏えいにつながる可能性があります。

APIキーや認証情報の管理を徹底する

API連携やコード利用を行う場合は、月ごとの利用上限、利用ログの確認、APIキーの管理、検証環境での動作確認、コードレビューなどを整えておくことが重要です。

特に、APIキーやパスワードなどの認証情報をコード内に直接書き込むことは避ける必要があります。業務環境で使用するコードは、個人判断で導入するのではなく、管理者やBIM担当者が確認したうえで利用する体制を整えておくことが大切です。

BIM・建築設計でAIを使う前に決めておきたい社内ルール

BIM・建築設計でAIを安全に活用するには、個人の判断に任せるのではなく、社内で一定のルールを決めておくことが重要です。AIは手軽に使える反面、入力する情報や出力結果の扱い方を誤ると、情報漏えいや誤った判断につながる可能性があります。

特に、BIMデータや図面、仕様書、施主情報などを扱う企業では、AIを「使ってよいかどうか」だけでなく、「どの業務で、どの範囲まで使ってよいか」を整理しておく必要があります。

社内ルールとしては、次のような項目を決めておくとよいでしょう。

  • 使用してよいAIツール
  • AIに入力してはいけない情報
  • 匿名化すれば入力できる情報
  • AIの出力結果を確認する担当者
  • 社外提出資料にAI出力を使う場合の確認フロー
  • APIキーや認証情報の管理方法
  • AI生成コードや外部コードを使う際の確認手順

「機密情報は入力しない」という表現だけでは、人によって判断が分かれます。施主名、住所、未公開案件の図面、契約書、社外秘資料、認証情報、APIキーなど、入力禁止情報の例を具体的に示すことが重要です。

また、AIを使いやすい業務と、AI任せにすべきではない業務を分けておくことも大切です。資料のたたき台作成、議事録の整理、用語説明の補助、アイデア出しなどはAIを活用しやすい領域です。一方で、法規判断、構造や安全性に関わる判断、契約内容の最終判断、施主への正式な提案内容、業務環境でのコード実行判断などは、人が責任を持って確認する必要があります。

AIの利用範囲を明確にすることで、業務効率化とリスク管理のバランスを取りやすくなります。

AIを安全に活用するには、使い方よりも管理方法が重要

BIM・建築設計におけるAI活用は、今後さらに広がっていくと考えられます。設計資料の作成補助、BIMデータの整理、議事録の要約、コード作成補助など、AIをうまく使うことで業務効率化につながる場面は少なくありません。

一方で、BIM・建築設計の現場では、図面、施主情報、仕様書、積算情報、未公開案件の資料など、機密性の高い情報を扱います。AIの使い方を誤ると、情報漏えい、誤った設計判断、想定外のAPIコスト、不正コードの利用、著作権上の問題などにつながる可能性があります。

大切なのは、AIを使うか使わないかだけで判断するのではなく、どの業務で、どの情報を、どの範囲までAIに扱わせるかを決めることです。

社内ルールや確認フローを整えたうえでAIを活用することで、BIM・建築設計の品質や信頼性を守りながら、業務効率化につなげることができます。

BIMの導入や運用を進める際は、ツールの活用だけでなく、社内の業務フローや情報管理の仕組みを整えることも重要です。ixreaでは、BIMに関する学習・運用支援を通じて、建築設計業務の効率化やBIM活用をサポートしています。BIMの導入や活用方法にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

吉田 浩司

吉田 浩司 / 株式会社ixrea  代表取締役

建築設計とBIMコンサルを軸に、多様なプロジェクトに携わる。設計事務所の経営に加え、BIMを活用した教育プログラムやDX支援にも注力。(公社)日本建築士会連合会青年委員長としても活動し、業界全体の次世代育成や地域活性にも取り組む。新しい技術を活用し、建築と社会をつなぐ仕組みづくりを目指している。