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2026.01.13

建築・設計

ホテル設計の最新トレンド|都市型・用途変更案件で増える「アパートメントホテル」とは?

ホテルを取り巻く市場環境は、ここ数年で大きく変化しています。
立地条件や建設コスト、運営の考え方まで、従来の前提が通用しにくくなってきました。

そうした中、近年のホテル設計・企画段階で注目されているのが、

「アパートメントホテル」という宿泊施設の在り方です。

都市型案件や用途変更を前提とした計画において、この形式がなぜ選ばれているのか。本記事では、設計・事業計画の視点から整理していきます。

不動産投資は変化の時期にある

土地価格の上昇や建設費の高騰により、不動産投資を取り巻く前提条件は大きく変化しています。従来のように規模や立地条件だけで成立する開発は厳しくなり、事業性の組み立て方そのものが見直される局面に入っています。

こうした中で、投資対象として改めて注目されているのが宿泊施設です。
特に近年は、観光を前提とした短期滞在型ホテルだけでなく、長期滞在を想定した宿泊形態へと市場ニーズが広がりつつあります。

その結果、都市部のコンパクトな敷地や既存建物であっても、条件次第では事業化が可能となるケースが増えています。

観光需要に依存しない宿泊需要が増加

宿泊の目的は、観光だけに限られなくなっています。
ワーケーションや長期出張、ロングステイなど、滞在動機は多様化し、一定期間「生活する」ことを前提とした利用が増加しています。

新築だけでなく既存建物活用の検討が増加

土地価格の高騰により、新築による開発だけで事業を成立させることが難しいケースが増えています。
そのため、用途変更や既存ビルの活用を前提とした計画が、現実的な選択肢として検討されるようになっています。

“泊まる場所”から“暮らせる空間”へ価値が変化

宿泊施設に求められる役割も変化しています。
単に泊まるための場所ではなく、一定期間を快適に過ごせる「暮らしに近い空間」が求められるようになっています。
その結果、ホテルが住宅的な機能を取り込み、宿泊施設と住居との用途の境界は、徐々に曖昧になりつつあります。

なぜアパートメントホテルが注目されているのか

こうした市場環境の変化を背景に、近年注目されているのがアパートメントホテルです。
都市型案件や用途変更を前提とした計画、小規模な敷地条件においても成立しやすい点が、この形式の大きな特徴といえます。

滞在期間の長期化に対応できるホテル形式

アパートメントホテルは、数日から数ヶ月までの滞在に対応できる宿泊形式です。
利用期間の幅が広く、需要に応じた柔軟な運用が可能となります。

収益モデルを複線化できる

アパートメントホテルは、運用方法を切り替えることで複数の収益モデルを組み合わせることが可能です。宿泊利用だけでなく、マンスリーや定額利用、賃貸的な運用など、需要に応じた柔軟な収益設計が行えます。

サービスアパートメント文化の国内普及

滞在スタイルの変化に伴い、サービスアパートメントという考え方も国内で広がりつつあります。民泊から、法制度に適合した長期滞在型ホテルへと、利用者の選択が移行する動きも見られます。

アパートメントホテルの設計で重要となるポイント

アパートメントホテルでは、一般的なホテル設計とは異なる視点が求められます。
設計段階から、居住性や防音、設備配置、将来の運用までを見据えた検討が重要となります。

生活インフラ前提の客室計画

アパートメントホテルの客室は、生活を前提とした計画が求められます。キッチンやランドリー、収納、ワークスペースなど、滞在中の生活を支える設備を想定したスペックが必要となります。

住居性能とホテル運営性のバランスを取る

居住性を高める一方で、ホテルとしての運営効率も考慮する必要があります。防音性能や換気計画、清掃動線など、快適さと運用性の両立が設計上の重要なポイントとなります。

将来の用途変更・再転用に備える設計思想

市場や運用条件の変化を見据え、将来の用途変更を前提とした設計が重視されるようになっています。「ホテルから賃貸へ」「賃貸からホテルへ」といった転用のしやすさは、事業性や投資判断にも影響します。

都市型・小規模ホテルでは特に有効な選択肢

都市部や小規模な敷地条件では、土地制約や事業性の評価が計画の前提となります。その中で、アパートメントホテルは、条件整理が行いやすいモデルの一つとして検討されています。

敷地条件より先に“運営方式”の整理が必要

都市型・小規模案件では、敷地条件だけで設計を進めることが難しい場合があります。建て方ありきではなく、想定する運営方法に合わせて空間を整理していく視点が重要となります。

客室効率より「稼働効率・更新効率」を優先

都市型・小規模ホテルでは、客室数や面積効率だけでなく、日常運営における稼働性や設備更新のしやすさも重要な視点となります。清掃性や設備更新性は、運営のしやすさに直結します。

設計と運営が連携するプロセスが成功の鍵

アパートメントホテルの計画では、設計だけで完結させることは難しくなっています。運営者や事業者と連携し、企画段階から共同で検討を進めることが、計画の実現性を高める要素となります。

これからのホテル設計は用途を固定しない空間設計へ

これまで見てきたように、アパートメントホテルの設計では、滞在形態や運営方法の変化を前提とした計画が求められます。

市場環境や社会状況、運営手法が変化し続ける中で、あらかじめ用途を固定した建築よりも、用途の変化に対応できる空間設計そのものが価値を持つ時代になっています。

ホテルと住居の境界が曖昧になる今後においては、こうした柔軟性を設計段階から組み込むことが、事業の持続性を左右する重要な要素です。

企画・用途変更の段階から相談できます

ixreaでは、設計に入る前の段階から、事業性の検討、計画条件の整理、用途変更に関する検討、概算プランニングまで一体的にサポートしています。

構想段階からのご相談も可能です。
計画初期だからこそ整理すべき点について、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

吉田 浩司

吉田 浩司 / 株式会社ixrea  代表取締役

建築設計とBIMコンサルを軸に、多様なプロジェクトに携わる。設計事務所の経営に加え、BIMを活用した教育プログラムやDX支援にも注力。(公社)日本建築士会連合会青年委員長としても活動し、業界全体の次世代育成や地域活性にも取り組む。新しい技術を活用し、建築と社会をつなぐ仕組みづくりを目指している。

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