COLUMN

COLUMN

2026.11.05

BIM

人材不足時代のBIM運用体制|オペレーターに頼らない、AI×情報マネジメントの考え方

BIMオペレーターは必要? AI×情報マネジメントで考える人材不足時代のBIM運用体制

BIMの導入は進んでいるのに、運用が思うように回らない。そんなとき、多くの企業がまず考えるのが「BIMオペレーターを確保しよう」という対策です。

しかし、ここ1〜2年で状況は大きく変わりました。AIやデータ連携の進化によって、モデリングや属性入力といった作業の多くは、人が手を動かさなくても進められるようになりつつあります。いまBIM運用で問われているのは「誰が作業するか」ではなく、「プロジェクトの情報をどう整理し、どう使うか」です。

本記事では、人材不足を前提にしたこれからのBIM運用体制を、オペレーターに頼らない「情報マネジメント」とAI活用の視点から整理します。

BIMオペレーターを増やしても運用が回らない理由

BIMが思うように回らない原因は、単純な人手不足ではありません。誰が判断し、どの情報を、どのルールで管理するのか。この前提が整理されないまま運用が始まっていることが、多くの企業で共通するボトルネックです。

作業する人より「判断する仕組み」が不足している

BIMツールの導入は進んでいても、それを支える運用ルールや判断基準の整備が後回しになっているケースは少なくありません。判断の仕組みがない状態でオペレーターを増やしても、作業量が増えるだけで、確認待ちや手戻りは減りません。

属人化が運用を止める

運用ルールが整理されていないと、判断や調整が特定の担当者に集中します。その人が不在になるだけで業務が止まり、モデルやデータの扱いも人によってばらつきます。人を増やすほど、この属人化はかえって進みやすくなります。

AIの進化で「BIMオペレーター」の役割はどう変わったか

これまでBIMオペレーターは、設計情報をもとにしたモデリング、図面作成、属性入力、モデル整理といった実務を担ってきました。こうした作業は、AIやデータ連携の進化によって、大きく姿を変えつつあります。

入力・整理の作業は自動化が進んでいる

プロジェクトの情報がデータベースとして整理されていれば、AIを使ってBIMモデルへ情報を入力したり、必要な情報を抽出・集計したりすることができます。これまで人が手作業で行っていた入力やチェックの多くは、仕組みで置き換えられるようになってきました。

残るのは「何を入力し、どう使うか」を決める仕事

作業が自動化されても、どの情報を管理するのか、どの精度で入力するのか、出てきた結果をどう判断するのかを決めるのは人の役割です。BIMの概念や情報の構造を理解していれば、専任のオペレーターがいなくても運用は成り立ちます。求められているのは、操作する人ではなく、情報を設計し判断できる人です。

オペレーターを抱える体制はリスクにもなる

オペレーターの確保を前提に体制を組むと、採用・育成のコストに加え、外注先とのやり取りやデータの受け渡しといった調整業務が増えます。自社で効率化した業務フローがあっても、作業だけを切り出して外部に渡すと、そのフローに乗らずにかえって手間が増えることもあります。人を増やすことが、必ずしも生産性の向上につながるとは限りません。

BIMより先に整えるべき「情報マネジメント」

BIMを導入しようとすると、つい「BIMソフトをどう使うか」に意識が向きがちです。しかし本来、先に整えるべきなのは、プロジェクトの情報をどう管理するかという情報マネジメントです。

ISO 19650の中心も情報マネジメント

BIMの国際規格であるISO 19650は、BIMを使った「情報マネジメント」の規格です。誰が、どの情報を、どの段階で、どの状態で共有するのか。そのルールを定めることが中心にあり、BIMモデルはその情報を扱う手段の一つという位置付けです。

情報が整理されているからAIが使える

AIを業務に活かせるかどうかは、情報が整理されているかどうかで決まります。図面、モデル、仕様、打合せ記録、承認履歴などがばらばらに保存されていると、AIに渡す情報を集めるだけで手間がかかり、誤った情報を参照するリスクも高まります。情報を一元化し、データベースとして扱える状態にしておくことが、AI活用の前提になります。

BIMは情報マネジメントを構成する要素の一つ

情報マネジメントが整っていれば、BIMは「情報を立体的に扱うための手段」として自然に業務に組み込めます。反対に、情報の整理がないままBIMだけを導入すると、モデルを作ること自体が目的になり、運用が続きません。順番は「情報マネジメント → BIM・AIの活用」です。

▼関連記事はこちら

人材不足時代のBIM運用体制のつくり方

オペレーターの人数に頼らない体制をつくるには、次の4つを順番に整えていくことが現実的です。

1. 判断者(BIMマネージャー)を明確にする

まず必要なのは、運用ルールを決め、判断に責任を持つ役割です。BIMマネージャーが運用ルールの設計、判断基準の整理、関係者の調整、品質管理を担うことで、担当者が変わっても運用がぶれなくなります。社内に適任者がいない場合は、外部の専門家の支援を受けながら、社内に判断軸を根付かせていく方法もあります。

2. ルール・標準化・命名規則を整える

ファイルやモデル、属性情報の命名規則、入力する情報の範囲と精度をあらかじめ決めておきます。ルールが明確であれば、人が作業してもAIが処理しても、同じ品質の情報が蓄積されていきます。

3. CDEで情報とレビューの流れを一元化する

CDE(共通データ環境)を使ってプロジェクトの情報を一か所に集め、作業中・共有・公開・保管といった情報の状態と承認の流れを管理します。情報の置き場所と状態が明確になることで、関係者もAIも、正しい最新の情報を参照できるようになります。

4. AIを「補助者」として業務に組み込む

情報が整理されたら、入力・抽出・集計・チェックといった作業にAIを組み込んでいきます。ただし、AIの出力をそのまま設計判断に使うのは危険です。法規や構造、設備の判断は専門家が確認し、AIはあくまで作業を補助する役割として位置付けます。業務で使う際の情報管理の注意点は、BIM・建築設計でAIを使う際の注意点で詳しく解説しています。

▼関連記事はこちら

体制づくりで陥りやすい落とし穴

・ツールを導入して終わってしまう

BIMソフトやAIツールを導入しただけでは、運用は変わりません。何の情報を、誰が、どう管理するかを決めて初めて、ツールが機能します。

・作業だけを外部に任せてノウハウが残らない

入力やモデリングを外部に任せきりにすると、情報の扱い方や判断の基準が社内に蓄積されません。外部の力を借りる場合も、情報を管理する主体は自社に置くことが重要です。

・AIに判断まで任せてしまう

AIは自然な文章で誤った情報を出すことがあります。作業の効率化には積極的に使いつつ、最終的な判断と責任は人が持つ体制を崩さないことが大切です。

まとめ|BIM運用は「情報の整理」から始める

人材不足の中でBIM運用を前に進めるために必要なのは、オペレーターを確保することではありません。プロジェクトの情報を整理し、判断する仕組みを整える情報マネジメントこそが、これからのBIM運用の土台になります。情報が整っていれば、AIを活用して作業を効率化でき、少ない人数でも運用を続けられます。

ixreaでは、人材を提供する支援ではなく、BIM運用が回り続けるための情報マネジメントと体制づくりを支援しています。情報の整理方法や運用ルール、判断軸と役割分担を明確にし、AIの活用も見据えた、属人化しないBIM運用の仕組みをつくります。

運用開始後も伴走しながら、状況に応じた改善を行います。BIM運用や情報管理にお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

吉田 浩司

吉田 浩司 / 株式会社ixrea  代表取締役

建築設計とBIMコンサルを軸に、多様なプロジェクトに携わる。設計事務所の経営に加え、BIMを活用した教育プログラムやDX支援にも注力。(公社)日本建築士会連合会青年委員長としても活動し、業界全体の次世代育成や地域活性にも取り組む。新しい技術を活用し、建築と社会をつなぐ仕組みづくりを目指している。

“ BIM ”の他の記事