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2026.04.16

BIM

建築業界の2029年問題とは?DXが進まない企業が人材を確保できない時代

近年、「2029年問題」という言葉が語られることが増えています。
建築業界では主に、技術者の高齢化や人材不足、技術継承の難しさなどが重なり、今後の業界運営に大きな影響を与える可能性がある問題として指摘されています。

特に設計分野では、ベテラン技術者の退職が進む一方で、若手人材の確保が難しくなっているという声も多く聞かれます。こうした状況の中で、企業の業務環境や働き方が人材確保に影響するケースも増えてきました。

近年の若手世代は、デジタルツールやIT環境を前提とした働き方に慣れています。そのため、DXが進んでいない企業では業務環境とのギャップが生まれ、人材確保がさらに難しくなる可能性もあります。

本記事では、建築業界で語られる2029年問題の背景を整理しながら、人材不足とDXの関係、そして今後の建築業界に求められる取り組みについて解説します。

2029年問題とは

2022年度から、高校では新しい教科「情報Ⅰ」が必修となりました。

この科目では、従来のパソコン操作やインターネットの使い方といったレベルを超え、プログラミング、データ活用、ネットワーク、情報社会の仕組みなどを体系的に学ぶ内容で、背景には、日本社会全体がデジタル化へ大きく舵を切ったという国家的な事情があります。

2025年から大学入学共通テストには新たに「情報」の科目が追加されました。
2029年は、高校時代から「情報Ⅰ」を履修した世代が大学を卒業し、社会に出始める時期です。

この世代は、それまでの社会人とは異なり、

・プログラミングの基礎
・データ分析の考え方
・情報システムの構造

といった知識をもったデジタルネイティブの新しい人材が一気に流入することになります。この世代と既存の組織文化とのギャップが、社会のさまざまな分野で顕在化する可能性があると言われています。

建築業界で2029年問題が深刻と言われる理由とは

建築業界で言われる「2029年問題」とは、技術者不足と技術継承の課題が同時に顕在化する可能性がある問題を指します。

建設業では以前から人材不足が課題とされていますが、今後はベテラン技術者の退職が進むことで、その影響がさらに大きくなると考えられています。特に設計や施工管理の分野では、長年の経験によって培われたノウハウが重要であり、技術継承が十分に進まなければ業務に影響が出る可能性があります。

こうした状況であるにも関わらず、業界全体としてDX化がかなり遅れています。

前述のデジタルネイティブの人材と業界とのギャップが大きく、人材の確保や定着に大きな懸念があると言われています。

2029年問題の背景

建築業界で2029年問題が語られる背景には、主に次のような要因があります。

  • DXの遅さ
  • 技術者の高齢化
  • 若手人材の不足
  • 技術継承の難しさ
  • 業務の属人化

これらの課題が重なることで、建築業界では今後、技術者不足だけでなく「業務の進め方」そのものが問われる可能性があります。

デジタルネイティブ世代の登場

現在の若手世代の多くは、デジタルツールやクラウド環境を前提とした働き方に慣れた、いわゆるデジタルネイティブ世代です。大学や専門学校でもデジタルツールを活用した学習環境が一般的になっており、IT環境を活用した業務に抵抗が少ない傾向があります。

一方で、建築業界では紙への印刷を前提とした図面を中心とした業務や、個人の経験に依存した業務フローが残っている企業も少なくありません。そのため、業務環境と若手世代の価値観の間にギャップが生まれることがあります。

DXと人材確保の関係

こうした背景から、DXが進んでいる企業やデジタル環境が整備されている企業に人材が集まりやすくなる可能性も指摘されています。

逆に、DXが進んでいない企業では、若手人材の確保がさらに難しくなるリスクもあります。人材不足の問題は、単に採用の問題ではなく、企業の業務環境や働き方とも深く関係しているといえるでしょう。

これからの建築業界では、若手人材にとって働きやすい業務環境を整備できるかどうかも、企業の競争力の一つになると考えられます。

建築業界でDXが求められる理由

こうした課題に対応するため、建築業界でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性が高まっています。

DXは単にITツールを導入することではなく、業務の進め方や情報の扱い方を見直し、より効率的な仕組みに変えていく取り組みです。

属人化した業務の課題

従来の建築業務では、図面や資料の管理が個人に依存しているケースも少なくありません。その場合、担当者が変わると情報の引き継ぎが難しくなったり、設計変更の情報が関係者に十分共有されないといった問題が起こることがあります。こうした属人化は、技術継承の観点からも大きな課題といえます。

DXによる業務改善

DXを進めることで、設計情報やプロジェクトデータを組織として管理しやすくなり、次のような効果が期待できます。

  • 情報共有の効率化
  • 業務プロセスの改善
  • 技術継承の仕組みづくり

こうした取り組みは、業務効率の向上だけでなく、若手人材にとって働きやすい環境づくりにもつながります。

BIMと建築DXの関係

建築DXの中でも重要な役割を担うのがBIMです。
BIMは、建築プロジェクトに関わる情報を統括的に効率よくマネジメントしようとする考え方です。建物の情報を3次元モデルに統合するかたちで管理し、設計・施工・維持管理の各段階で活用できる仕組みになっています。

従来の建築業務では、図面や資料、仕様書などの情報が個別に管理されることが多く、設計変更の情報共有やデータ管理が難しい場面もありました。担当者ごとに情報管理の方法が異なる場合、関係者間で情報の整合性を保つことが難しくなるケースもあります。

BIMでは建物の情報を3次元モデルと統合して一元的に管理することで、設計・施工・維持管理の各段階で情報を共有しやすくなります。設計変更が発生した場合でも、モデルを基準に情報を整理することで、関係者間の調整を行いやすくなります。

このように、BIMは設計ツールという位置づけだけではなく、建築DXを支える情報基盤として重要な役割を担う仕組みといえます。

2029年問題に向けて建築会社が取り組むべきこと

2029年問題に対応するためには、単に人材を増やすだけではなく、業務の進め方や情報管理の方法を見直していくことが重要になります。

建築業界では、設計情報や図面、各種資料など多くの情報がプロジェクトごとに扱われます。こうした情報が個人の管理に依存している場合、担当者が変わると業務の引き継ぎが難しくなったり、設計の背景や判断の経緯が共有されないといった問題が生じることがあります。

企業としては、こうした状況を改善するために次のような取り組みが求められます。

  • 設計情報のデジタル化
  • 情報共有環境の整備
  • BIMなどのデジタルツールの活用
  • 業務プロセスの見直し

こうした取り組みは、業務効率の向上だけでなく、技術継承や人材育成の環境づくりにもつながります。

まずは経営者がDXとBIMを理解することが重要

多くの企業でDXが進まない最大の理由は、実は技術ではありません。それは「経営者の理解」です。

DXやBIMは単なるソフトウェアを導入すればいいのではなく、設計、施工、維持管理に至るまで、建築プロセス全体の情報の扱い方を変える経営戦略です。

若手人材は情報リテラシーが高く、DXやBIMに対して積極的に取り組みますが、それだけでは本質的な変革にはなりません。

本来BIMが持つ価値は、設計情報をデータとして一元管理し、関係者全体で共有することにあります。そこには組織の意思決定や業務フローの改革が不可欠であり、経営のコミットメントがなければ成立しません。

まずは、経営者や若手を指導する上司が、しっかりとした基礎知識を身につけDXやBIMの本質を理解した上で、変革を本気で考え実行することが重要です。

建築業界の未来とDX

建築業界の2029年問題は、単なる人材不足ではなく、業務の進め方や情報管理の方法を見直す必要性を示す問題ともいえるでしょう。

また、日本でBIMという言葉が広く使われ始めたのは2009年前後と言われていて、そこから約20年が経過するのが2029年です。技術としての導入期を経て、BIMは実験的な段階から社会インフラとしての段階へ本格的に移行する時期に差しかかります。

そして、2029年からは確認申請プロセスにおいてBIMデータを活用する動きが進んでおり、データによる申請の仕組みが現実の制度として動き始める予定となっています。

建設業界にとって、2029年はとても大きな転機となります。

私たちixreaではBIMのフロントランナーとして、建築DXやBIM導入、業務のデジタル化に関するご相談に幅広く対応しています。建築業界のDXやBIM活用について検討されている場合は、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

吉田 浩司

吉田 浩司 / 株式会社ixrea  代表取締役

建築設計とBIMコンサルを軸に、多様なプロジェクトに携わる。設計事務所の経営に加え、BIMを活用した教育プログラムやDX支援にも注力。(公社)日本建築士会連合会青年委員長としても活動し、業界全体の次世代育成や地域活性にも取り組む。新しい技術を活用し、建築と社会をつなぐ仕組みづくりを目指している。

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